限定盤A

限定盤A

CD+単行本(黒木渚初の連作小説「壁の鹿」全6話340P)
¥4,200+税 / LACD-0263

黒木自身が書き上げた340ページにも及ぶ壮大な物語、
連作小説「壁の鹿」完全版の単行本をセットした
スペシャル・パッケージ。レア・アイテム必至の完全部数限定盤!

壁の鹿

限定盤B

限定盤B

CD+LIVE DVD(全8曲)
¥3,000+税 / LACD-0264

黒木渚 FREE LIVE ONEMAN TOUR
「君が私をダメにする」恵比寿LIQUIDROOM. 2015.7.22

LIVE DVD収録曲

  1. 革命
  2. 金魚姫
  3. プラナリア
  4. テーマ
  5. エジソン
  6. 君が私をダメにする
  7. フラフープ
  8. 虎視眈々と淡々と

通常盤 CDのみ  ¥2,000+税 / LACD-0265 ※ジャケットは限定盤Aと同様です

MUSIC VIDEO

大予言

君が私をダメにする虎視眈々と淡々と

テーマ革命

LONG DISC REVIEW

決められた定型を抜け出して、感情を解放せよ

自由律とは、主に短歌や俳句の世界で用いられる用語で、たとえば五七五や季語のような定型にとらわれず、感情の自由な律動に任せた歌づくりを指す。それは単なる破壊やデタラメではない。決められた定型を意識した上で、そこを脱して新しい次元を目指す、極めてポジティヴでアグレッシヴな精神の動きのことだ。その言葉の意味がわかれば、黒木渚のニューアルバム『自由律』がどんな作品なのか、なんとなく想像してもらえるだろう。
前作『標本箱』から1年5か月の間、彼女が心血を注いで作り上げてきた膨大な楽曲の中から選び抜かれた9曲。これまで以上に実に様々なタイプの曲が収められているが、すべての楽曲に自由律の精神が生々しく息づいている。まったく、なんと凛々しく、なんとエモーショナルなアルバムだろう。

1曲目を飾る「虎視眈々と淡々と」は、時代も評価も人の目も何もなく、私は私のままで今を強く生きてやるという黒木渚の人間宣言として、1月にリリースされたシングル曲だ。凄まじいスピードで疾走するバンドと、狂奔するストリングスとがぶつかりあい生み出す強烈なエナジー。この曲以外に1曲目はありえない。

続く「枕詞」は、短歌で使われる枕詞ではなく、英語で言うところのピロートークの意。ベッドでクライマックスを終えたその瞬間の男女の会話を、理性とエロスの両面から生々しく描き出す、作家としての黒木渚の真骨頂だ。會田茂一、キタダマキ(Syrup 16g)、恒岡章(Hi-STANDARD)という最少にして最強3ピースの演奏が掛け値なしに素晴らしい。

アルバムのリード曲に選ばれたのは、3曲目に登場する「大予言」だ。残酷と障害に満ちた現代社会の描写から始まり、そんなものはぶち破ってゆけ、最後に勝つのは我々だと高らかに宣言する。「虎視眈々と淡々と」よりもさらに大きなスケールで、同志の結集を促す黒木渚流の応援歌に、無条件で胸高鳴る。サウンド的には従来のスタイルからかなりはみ出した曲で、なんとなくチャイニーズ風の不思議なリフを軸に、ミドルテンポのポップな曲調を前のめりに破壊してゆく、柏倉隆史(toe,the HIATUS)のドラムが凄すぎる。

「アーモンド」は三拍子の穏やかなリズムがかつての「骨」を思わせ、七五調の歌詞に合わせたきれいなメロディと叙情的なピアノが肝だ。キリンジの千ヶ崎学の流麗なベースも効いている。歌詞は、街で見かけた奇形のハト、駅で迷子になった少女の描写からひるがえって、弱い自分を見つめ、認め、奮い立たせて明日へ向かうというテーマに着地させる、黒木渚の非凡な筆力が冴え渡る。

次の「107」も、静謐でメロディアスなスロー・チューンとして、アルバムの中で特筆すべきもの。「枕詞」と同じく、密室での男女の会話を軸に物語が進んで行くが、こちらの二人の関係はもう少し複雑だ。後悔と孤独の中で、終わってしまう愛についての淡々とした描写がかえって鋭く心を刺す。ヴァイオリンとチェロの物悲しい響きが抜群の劇場効果を挙げ、プロデュースも手がけた松岡モトキの弾くリード・ギター、感情がぶちぶちと引きちぎれるようなノイジーな響きが、歌詞にぴたりと合っている。ドラムBOBO(フジファブリック,MIYAVI)、キーボード奥野真哉(ソフル・フラワー・ユニオン)の快演は言うまでもない。

一転して「命がけで欲しいものひとつ」は、勇ましいマーチング・ドラムのフレーズに乗せて行進曲のように鳴り響く、ポジティヴなメッセージを込めた1曲。故郷を出て、東京で生きて戦い音楽を作る彼女の現状をそのまま描いたであろうストレートな歌詞で、「命がけで欲しいものひとつ」を求める姿勢が凛々しく力強い。間奏でちらりと登場する「第九」のコーラスもいいアクセントだ。

「テンプレート」はこのアルバムで最大の問題曲。プロデュースを手がけたsasakura.UKは、ボカロPとして世に現れ、楽曲提供やゲーム音楽の制作、近年は矢野顕子へのトラック提供など活動の場を広げる才人。膨大な効果音、パーカッション、電子音が飛び交うどこかトライバルな音色の中で、ロックバンドとダンスミュージックが合体して作り上げる不思議な音空間。世の中に溢れるテンプレートなセリフ、警告、命令などを集めた歌詞はクールなコラージュで、黒木渚の文学的な側面をよく表している。なんともシニカルで不気味な、繰りかえし聴きたい魅力ある曲だ。

「君が私をダメにする」は、ご存知の通り、6月にリリースされた直近のシングル曲。彼女いわく“「革命」や「虎視眈々と淡々と」に出てくる主人公のプライベートの恋愛を描いた曲”で、強い女ほどダメ男に惹かれやすいというテーマを明るくユーモラスに、しかも力強い生き方ソングに仕立てた会心の1曲だ。渋さ知らズのスガダイローが弾くピアノのとんでもない凄さは、黙って聴いてくださいと言うほかはない。

そしてアルバムのラストを締めくくるのは「白夜」。これもサウンド的には異色で、キリンジの田村玄一がプレーするペダル・スティールとスティールパンの響きが、オルタナ・カントリー風の不思議な抒情をかもし出す。歌詞はラブソングのスタイルを取りながら、“皮膚の内側に手を入れて体中を探している”など、彼女独特のシュールでなまめかしい表現を散りばめながら、最後は“はるか遠くへ”という力強いリフレインで幕を閉じる。メッセージ・ソングとラブソングが混交して様々なイメージを喚起させる、美しく穏やかな中に強い生命力を感じさせる曲だ。

全9曲を聴き終えると、前作『標本箱』で描いた“自らの中にある様々な女の物語”というテーマをさらに自分に引き寄せ、どの曲にも黒木渚個人の生き方と思想がはっきりと映し出されているように感じられる。一方でサウンド的には、3ピースのロック・チューンからエレクトロニックな音作りまで、確実に幅が広がった。言いたいことは明確に、そして音楽は娯楽性たっぷりに。リリースに併せて執筆してきた小説「壁の鹿」の制作も、作詞家・黒木渚の進化に大きく貢献しただろう。伸びやかな歌も、この1年間でライヴを重ねることで着実にパワーと表現力を増している。

決められた定型--たとえば生い立ち、環境、学校、仕事、容姿、能力、そして現代の社会情勢など、誰もが定型だと思って従っているものは、本当に抜け出せないものなのか。リード曲「大予言」の中でも特に耳に残る、“信じるも信じないもあなた次第”というフレーズが何を指しているのか。『自由律』で黒木渚は、自らが先頭を堂々と歩きながら、リスナーを新しい世界へと誘惑している。乗るか乗らないか、決断はあなた次第だ。

TOUR SCHEDULE

黒木渚ワンマンツアー2015「自由律」

チケット一般発売中!